2023年9月下旬、ボイスのイスタグラムに悲痛なメッセージがやってきました。
「秋田犬2匹に関するネグレクトで、警察に相談してもいいのでしょうか?
2年ほど前に市への相談はしたのですが改善されなくて…」
切羽詰まったメッセージでした。
シェルターを持たないボイスオブアニマルズが、秋田犬2頭に何ができるのか…?
警察、というワードが出るほどに拗れたこの一件に、ボイスの中でも意見が分かれました。
オーナーがいる以上、犬は所有権の問題などがあり、助けたくても、逆に訴えられる可能性も考えなければなりません。
もう一つ、意見が分かれた背景には、毎日ひっきりなしに入る猫の保護要請があります。
ボイスのメンバーはみんな、個人宅で預かりボランティアをしているので、あっという間にキャパオーバー。
目一杯の、精一杯を超えています。
そして、収益事業や補助金もなく、ボイスの活動は皆様からのご支援で行われています。
「ここで断ってしまったら、命が失われる。」
「でも、、見捨てたくない。」
と、動物が好きだからこその葛藤で、心をすり減らす日々です。
そんな背景もあり、秋田犬2頭に関われる手も、場所も足りません。
秋田犬の飼育歴のあった編集部F(セブンの預かり)が対応し、2頭いるので、お山のシェルターボランティアOBさんにも、お世話のボランティアをお願いすることにしました。
現場に向かったのが9月22日のことです。
彼らは、この小さな小屋の、小さな世界に住んでいました。
父わんこ2016年生まれ。
その娘、2017年生まれ。
正直なお話をすると、彼らに会った時「そんなに緊急性がない?」と錯覚するほど、彼らは人間が大好きで、そして、栄養状態も悪くないように思えました。
ですが、ボイスに連絡をしてくださった通いのSさんからお話を聞くと、3年ほど前から、この地に移り、2年前には糞尿まみれ、痩せ細った姿を見かねたSさんが市役所へ通報をするほどに、ひどい状態だったというのです。
いつ、この小屋から出て散歩に行けたのか?
いつ、ご飯を食べられたのか?
いつ、人間と触れ合ったのか?
ボイス編集部Fとお山OBさんが現場に行った2023年9月の彼らは、通いのSさんが必死に関わってきたから辿り着いた「今」の姿だったのです。
緊急性がないなんてただの錯覚で、長い間、耐え忍んできた過去がありました。
ご近所でも知る人ぞ知る、この子達の状況。
秋田犬の虎毛2頭といえば、ただでさえ目立ちます。
ご近所の方も見かねて、こっそりご飯を上げてくれていたそう。。
今年の異常な酷暑では、耐えきれず、小屋をぶち破って脱走したことも…
脱走した際も、近所の方が保護して小屋に戻してくれたこともあったそうです。
こんなに可愛いのにね。
オーナーのさまざまな事情。
何度も住む場所が変わり、この子達の人生にはたくさんの困難が隣にありました。
でも、捻くれることなく、ただ純粋に人からの愛を渇望し、人への愛を忘れず、愛を惜しまない彼らの姿に、共鳴する人が一人、また一人。
私たちと、Sさん、わんこと面会した翌日から、運命は急展開!
ボイス編集部Fのお友達が、父わんこの里親に早速手を上げてくれました。
「この子が可哀想だからじゃない、可愛いから一緒にいたい!」
「これからウチに来たら、ただ甘やかされるためだけに生きるんだよ!」
深い愛情に裏付けられた温かい言葉に、関わっているメンバーは何度も涙しました。
それだけではなく、次々に娘わんこもお見合いを重ねてくださり、ついに、トライアルまで漕ぎ着けることができました。
朝夕、関わっていくうちに、秋田犬親娘の目にはどんどん表情や、無邪気さが見えるようになりました。
それが嬉しくて、可愛くて、魅了され、あっという間に2週間がすぎ、
10月6日(土)
ついに、娘わんこはトライアルに出発しました。
その際も、父わんこの里親になってくれた方の車に乗せてもらいました。
父わんこの里親さんにも、娘わんこの里親さんにも、ここには書ききれないくらい、とても大きなご負担をおかけしました。
感謝してもしきれません。
本当にありがとうございました。
10月6日。
通いのSさんが連絡をくれてから2週間しか経っていませんでした。
父わんこの里親さんの、凄まじい大きさの愛情が導いてくれた、幸せな未来が開けました。
今でも、もっと早くに、通いのSさんの想いをキャッチできていたら、この子達には違った「今」があったのかもしれないと思うと、悔やしさが溢れる瞬間があります。
でも、あきらめずに関わり続けてくれた通いのお世話さんSさんの想いにやっと応えられる瞬間が、「今」だったんだと。
後悔を挙げればきりがありませんが、それぞれの幸せに踏み出した二人の笑顔の写真が、その悔しさも溶かしてくれるようです。
通いのお世話Sさんからメッセージを受け取っています。
「終わりが来るなんて思ってもみなかった。誰も見向きもしてくれなかった。
けど、頑張ったら、こんな奇跡が起こるってみんなにも知ってもらいたい。
私は何にもしれやれなかったけど、この子達が可愛いから、引き寄せた奇跡。」
と、二人を撫でながら伝えてくれました。
出発前夜、こっそりご飯をあげ続けてくれた、ご近所Hさんのお手製のご飯を食べました。
あきらめずに長い間、お世話を続けたSさん。
ご自分のわんちゃんと同じように愛されてほしいと願い、こっそりご飯をくれていたご近所Hさんと、最後に写真を撮らせていただきました。
二人はどんなことがあっても、この小屋に戻ることはないでしょう。
飢えた記憶、孤独な記憶。
全部、これからの幸せで上書きをしてね。
フリフリ尻尾で、さよなら、今までの犬生。
秋田犬2頭の犬生が、とびきり幸せになりますように。
皆様からのご支援を、心から感謝しております。
温かい寄付金も、医療費に使用させていただいております。
たくさんの思いを寄せてくださり、心より感謝申し上げます。
皆さんへのご報告が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。